カテゴリー「楽器」の15件の記事

リュートのフレット修理完了すれども…。

リュートのフレットのリペア無事に終了。

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左側にマスキングテープが一部付着しているが、ほぼ完璧な仕上がり。

さぁ~っばりばり練習するぞと思ったら

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あれあれ、今度は指板上のガットのフレットが切れてしまった。

リカンベントのバックミラーも修理を待っているのに…。

一難去ってまた一難の藤兵衛であった。

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リュートのフレット修理

リュートの表面板上のフレットが破損してしまった件。

何はともあれ制作者の奥清秀さんの工房に楽器を持ち込んで修理していただきたいところだが、現在は、工房を埼玉県から東京へと移されている。埼玉県人の私は、以前は工房に度々足を運べたが(と言っても、埼玉の北と南を高速道路で往復)、今回は、自動車または電車で行くとしても、乗り換えがやっかいで時間がかかりそう…しかも、預け、引き取りあわせて2往復!どうしよう…と、思いあぐねていてもしょうがないので、フレットを取り寄せて自分で修理することにした。
 早速、奥さんに、予備用もふくめフレット3本の製作と送付の依頼のメールを送った。すると、快く承諾の返事をいただけたが、納期に2週間ほどかかるとのこと。まあ、焦らず、この間ガンバや自転車に勤しんで待つことにした。
 思いがけずも10日程して送付の連絡をいただき、フレット3本の代金計1500円也を振り込む。

 程なくして、郵送(封筒)にて手元に無事届く。

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ご覧の通り、楽器の材料の端切れとラップでしっかり包装されている。
1mm角、長さ8cmの黒檀?製…う~ん、自分じゃとても加工製作できない代物。

ちなみに、こちらが、奥清秀さんの弦楽器工房のブログ
                    お~っ!私の楽器の妹か弟分の製作中の写真!
                          (そういえばあちらの言葉ではリュートは何性だったかしらん?)

 何を隠そうこの自分、リュートキットを組み立てたり、ブリッジ修理をした経験があり、今回の修理は、お茶の子さいさい…おいおい大丈夫??

 おもむろに、膠(ニカワ)つけの準備を始める。

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膠の先を工具でくだき、数辺のかけらと少量の水を小容器に入れ湯煎して溶かし始める。

まずは、表面板にマスキングテープを張り養生をほどこす。

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誰かに教わった訳ではないが、このテープの隙間が味噌!フレットの位置決めと、接着度を高めるための紙やすりがけを表面板を傷つけずしかも容易すくする工夫なのである。

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 弦をかき分け、かき分け、テープの隙間に、折った紙やすりの背をあてて、あっちでゴシゴシ、こっちでゴシゴシ…ついでにピントもブレブレ。
 あれあれ、こんなに苦労しないで弦を外せばいいのに…?と訝(いぶか)るそこの貴方!…チッチッチッ!

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 貼り付けた後、圧着するための工夫なのである。アルミの定規をあて鉛筆を差し込み固定する。弦の張力を利用したこの賢さ…弦を外すのが(緩めるのも)単に面倒くさかったとも言えるが…。

 え~っと、肝心の膠づけの場面はというと…忙しくて写真どころではなかったのである。
 文章で再現すると、水彩絵具用の細筆を使い、チャッチャッとテープの隙間に膠を含ませ、その隙間にフレットをあてがった。そう、テープは、表面板に膠が染みださないための工夫でもあるのだ。!エヘンエヘン。
後は、ケースの蓋を閉じて膠が固まるのを待つだけ。

  結果は、寝て待つことにした藤兵衛であった。

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リュートが壊れた!

ブログほったらかし。
なぜならリア充。
職場で、こう話したら、若者から「いい年して恋してるんですか?」とひやかされた。
 おじさんは「リア充」の元々の意味は、仕事ではなく恋愛に関してのことと知ることとなる。う~ん、微妙…でもその言い方(ご指摘)、セクハラ、パワハラと並ぶハラスメントじゃ~と怒り悔しがる。「トシハラ」とでも呼ぼうかね。…この若造め!
   おっとと…、 私も気をつけねばと次回 自戒する…。

  春以来、仕事がちょっと一段落ついたのを機に、数十年来懸案だったバッハのリュート曲を自分でタブラチュア化し、リュート曲として演奏(実用)面から検証しようと意気込んでいた……のも束の間…。

 おわ~。愛用の奥清秀氏制作のリュートが壊れてしまった!
      …ブログさぼっていたので、白状すると昨日の記事の自転車落車目撃以前の出来事

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え~と…どこが?

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アップをご覧じあれ!表面板に貼り付けられていた木製フレットが欠損したのである。
何を大げさに!…とおっしゃる方。今取り組んでいるバッハのタブラチュア化=編曲→演奏にとって致命的なダメージとなったのである。…ジャーマン型もっているけど左指で指板の上で押さえられる弦が少ないので低音の使用が限定されてしまう…。いやもっと単純に例えるなら、ピアノの特定のキーが変になって演奏するに耐えられなくなってしまった状態、とイメージしていただければ納得していただけよう。

…何とかせねばと、早速、製作者の奥さん…まさにリュートは子供のようなもの(笑い)…にコンタクト。

その顛末は、きっと、きっと近いうち書くぞと、声(字)を大にして誓う藤兵衛であった。
 

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省エネで楽器も大変

梅雨が明けた。
カンカン照りの本格的な夏の到来。梅雨時のジメジメから解放されたのは何よりも嬉しい。リュートやガンバにとって湿気は大敵。例年はエアコンの世話になってなんとか凌いでいたが、今年は節電対策でエアコン自粛。蒸し暑さで気力も萎え、楽器をケースから取り出すのをためらう日々が続いた。そんなある日、ついに耐えきれず今夏初めての冷房のスイッチをいれる。満を侍してガンバを手にすべくケースを開けたところ最高音のガット弦が切れていた。しかも、先日手に入れたばかりの松脂が…

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暑さで溶けかかってグニャと変形…。さすがに硬めの右の松脂は羊羹の形状留めているが…
柔らかめの松脂は真夏時には冷蔵庫に保管する必要があると、どっかで聞いた気がするが、実物を眺めると驚きあきれるばかり。そういえば隣接する熊谷市では先月最高気温39.8度を記録している。その時の暑さの仕業か?
梅雨明け後も、最高気温37度の日々が続く。
 リュートの方は恐ろしくて今だケースを開けられず…どうしよう?

9月の定演を前に戸惑う藤兵衛であった。

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きっかけ

久しぶりのブログ更新。

仕事に疲れて楽器を弾き終えると書斎の椅子でウトウトしてしまう日々が続いた。その間、古楽器や自転車その他諸々のブログネタはたまる一方。ところが、何から書いていいか思いあぐね、結局は、あ~、めんどくさ~と書くタイミングを失い、冒頭に述べた体たらくと相成る。楽器もリュートばかり弾いてたので、そろそろヴィオラ・ダ・ガンバをかまってやろうと思っても、管理がやっかいな梅雨の季節、楽器を取り出すに気が引ける。自転車も雨が続き思うように乗れない。先日、満を待しての休日ライディングがパンクして転がして帰るという最悪の事態となった。自分の整備(準備)不足のせいで修理ができなかったのだ。う~ん、すっかり、ずぼらが身についてしまったようだ。このままではいかんぜよ!ととりあえず「プログ更新」で活路を開くべく、最後に書いた記事を開いてみた。奇しくも、その記事で、以前ガンバから今のリュートにのめり込んだ時の状況を思い出した。ある記事を見てリュートの奏法を思い切って変えてみようと思ったのがきっかけだったのだ。(そういえば、この顛末を紹介するといってすっかりすっぽかしている。)

  以前から「ガンバでやりたいな」と考えていた「あること」を決行することが「きっかけ」になるぞと気づいたのである。只今、震災を機に我が家の電灯のLED化を推進したり、あれしたりこうしたりで物入りが続き金欠状態ではあるが、幸いなことにその野望はさほど費用がかからないささやかなもの。今果たずしてなんとする!

…と奮い立ち、先日手に入れたのがこれ…。

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そう、弓に塗る松脂。英語ではRosin。

昔、野球中継での「投手が老人袋(実はRosin bag)を手にした」というアナウンスが意味不明だったのが、そのままだとなめらかな馬の尾毛の弓を、弦と摩擦を起こさせるために塗らぬばならぬと体感し、その重要性を知る。

初めてガンバを手に入れて以来使っていたのが、ドイツのPirastro社のもの。身近でヴァイオリンやチェロを弾く人が使っていたので何となく。右端のGold Rosinからその左上にある Oliv Rosin Evahに乗り換えてもみた(真ん中の黒い固まりがそれ)が、初心者ゆえその違いは対して実感できず、しょせん、こんなもん?と甘んじていた。この小さな固まりでも、落さない限り(初代Gold Rosinはすでに粉々)、アマチュアレベルだと結構長く使えそう…それで満足??

   そこで思い切って他社の松脂にトライしてみよう思った次第。どうせならと2種類を取り寄せる。

その1

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 こちらは、ずばりバスヴィオール/バロックチェロ用と銘打ったギリシアのMELOS社のもの。透明で柔らかそうな質感。

その2

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その形と色はまるで羊羹の切れ端。こういう形も初めてで新鮮。こちらは、昔の製法をもちいたというAquila製。そうリュートのガット弦でもお馴染みのあの会社。ヴァイオリン用らしいが、チェロやガンバでも広く使えるという触れ込みを信じて購入。こちらは見かけによらず固く粒子も細かい仕様。色も黒く、前者の松脂とは対照的。二つともしゃれた小袋入り…これぞまさしくロージンバッグ=巾着(笑い)

 とりあえず、後者のAquila社製を使いだしたが、高音の伸びが格段に違うのが実感できた。こんなにも違うのか? ! !? …MELOS社製も楽しみ。

 というわけで、松脂をきっかけに新境地が開け、只今ガンバに夢中。各松脂の代金は2500円程、合わせて飲み会一回分、二日酔いもなく長く楽しめる。

  …う~ん、白状するとついでにとスペアも含め弓の毛替え5000円×2本分も飛んで行った。飲み会は当分控えなくては…へたすると無期限謹慎?…。

 あの~その~。実は…つい…魔が差して…

   物欲がさらにエスカレートしてしまった藤兵衛であった。

                              …      …     …  新しいガンバ…

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私の愛器~奥清秀バロックリュート

お披露目!念願の注文制作楽器!!

奥清秀さんの制作13コース バロック・リュート

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モデル:Magno dieffopruchar
弦長:710mm
表面板:スプルース
ボディ:リブ11枚継ぎ    bird's-eye(鳥目)のあるメープル

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下手な余計なコメントはしたくない美しさ…。

  あ~、バーズアイ、トリプル(三つ目)ローズに魅入られる…。

  デコレーションは、私の大まかな要望に応えた奥さんの意匠によるもの…ペグ材も粋なココボロ材を見繕っていただいた。それらネック、ペグボックス等のデコレーション、表面板のハートマーク(スペードかも)の工作技術精度の高さ…トリプルローズの質感の豊かさ…もっと高解像度でお見せしたかった…云々かんぬんと結局惚気てしまった次第…。

  明瞭な響きで、高音から低音もバランスも大変良い。バスライダー型は低音弦がコントロールしやすい。究極のバロックリュート?(後期バロック~ロココスタイル)のジャーマンテオルボ型をメインにしながら、なぜバスライダー、トリプルローズなのか?その理由は後ほど…

ちなみに、我が楽器には双子の片割れが存在…。奥さんのブログで公開。私の楽器をはじめ色々な楽器の制作過程や修復の写真が掲載されているので是非ご訪問の程を…。

  基本にたち帰ってジックリ取り組める楽器に巡り逢ってご満悦の藤兵衛であった。

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バロックリュート、ついにガット弦に張り替える

先日ドイツのKüerschner社からリュートの弦が届いた。

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 かねてよりガット弦にしようか迷っていた愛器Brian Cohen のバロックリュート 用にと、ついに意を決して注文したものである。

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 以前から気になっていたのだが、袋のデザインにヴァリエーションがある。ガンバのガット弦を注文した時も混在していたが、弦の種類(ガット/ナイロンなど)で区別している訳でもなさそうだ。

  低音用の巻弦ガット(ガットに銅線をまいたもの)のVDシリーズは既にガンバに張っていてお馴染みだが、この度リュート用と銘打ったVDLシリーズはどんなものかと試しに取り寄せてみた。

  百聞は一見にしかず、写真のように先端部分にループが施されており、これに弦の先端を潜らせるだけで出来上がり(次の次の写真参考)。う~ん、これはガンバにも使えそう。こちらは、ただ通すだけで済むこと請け合い。めんどくさがり屋には重宝…といってもガンバは多くて も弦はフレンチで7本、片や13コースのバロックリュートは24本の弦と格闘しなければならない。たとえ数本でも、この便利な仕様の恩恵にあずかれるだけでも大変うれしい。

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とりあえず指板外の拡張低音弦だけでも張り替えてみようと、一番太い最低音弦からトライ…。

  …楽勝と思いきや、いきなりつまずく。ブリッジに空けられた弦を通す穴が小さくて最初からこのように通らなかったのである。つまり元のナイロンの巻弦よりもガットのそれは幾分太いのであった。

結局、針やすりでシコシコと穴を拡張するはめに…。上の写真は術後の姿。

当然ペグの穴の方もそれを要求する。

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  念には念を入れて複弦の細い(オクターブ高い)方の片割れにも手術を施す。羹に懲りて膾を吹くとはまさにこのこと?。それらに普通のガットであるDシリーズ…いわゆる素ガット(プレーンガット)を用意した。

  黙々とただひたすら穴を広げ、次から次へと弦を張り替えていく。気がつくと予定外の指板上の弦までやっていた。

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  その間、ちょっと手をすべらしたら針やすりの先端が折れてしまった…。根元の部分だけでも結構けずれ、むしろ具合がよくなった。

   上の写真をご覧になって「おやっ」とお気づきになった御方もいらっしると思うので…補足。

   ヤスリを挿入している箇所の左の大きな穴は、この楽器の前オーナーが単弦仕様で弦を張っていた時の名残りと推測する。おそらく前オーナーのうち誰か(英国人?)はギター弾きに違いない。

  続補  その前オーナーはヘビースモーカーでもあったらしく楽器から脂の匂いが今だ抜けない。タバコを吸わない自分にとって結構つらい。普段愛用する楽器として注文した奥さんのリュートの完成が待ち遠しい。長いスワンネックも狭い部屋ではもてあますというのも理由の一つ。

  う~ん。ともかくリュートの弦替えはとてつもなく大変。高音弦は、とりあえずすでに何本張ってあるナイルガット(ナイロン?製のガットもどき弦)で、全体の響きのバランスをみることにする。…というより、細いガット弦の耐久性と安定性を間近にせまった定演で実験する勇気がないというのが本音。

   あ~調弦がしんど…。慣れぬ加工作業で指が痛い。今日はこれで店じまい。どんな音がするのか…楽しみは後に取っておこう。

 先週に引き続き今週も土日の休日返上の仕事が待っている。しかも虎の子のその代休も出張で取られるというおまけ付き…

  試奏はおろかこの文章推敲する精根気力尽き果てんとする藤兵衛であった。

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奥さんのリュート完成間近

今日は出張で所沢。

来週は泊を伴う県外出張。しかも勝手がまるでわからない初仕事。

あ~ストレスがたまる。

ただし今日の出張は、イベント的内容なので結構気分的な息抜きになった。
でも遠距離の往復に結構疲れた。ふ~。

そんな折り、希望の光が一筋。

奥清秀さんに制作してもらっているバロックリュートが完成に近づいている。

奥さんのプログに制作中の写真が紹介されている。

完成が楽しみの藤兵衛である。

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私の愛器~リウト・アッティオルバート

 仕事が一段落ついたところで、遅ればせながら、深手を負い長 い入院生活の後、先日無事に修理を終えた我がリウト・アッティオルバートを改めて御紹介。

  イタリア語で「Liuto attiorbato」すなわち「テオルボ化されたリュート」という意味という。17世紀前半にはイタリアで普及していたらしい。一般的なG調弦のルネサンス・リュートは直角近くに折れ曲がった糸倉(ペグボックス)に10コース程度までを格納し指板上に配置するようになってはいたが、このリウト・アッティオルバートは7コースのルネサンス・リュートの糸倉をまっすぐに引き延ばして、その先端に7コースの拡張バス弦を取りつけた楽器と思えば良い。何と14コースの弦を持ち(1コースのみシングル)、計27本のリュート属最大の弦を有する楽器なのである。ちなみに、後に出現するアーチリュートと混同されている場合が多い(後述)。

 そもそも、テオルボ、キタローネ、アーチリュートの区別分類について、当時でもかなり曖昧なところがある。一例をあげるとキタローネは金属弦、テオルボはガット弦を張ったと誠しやかに言われていた。近年になってかなり研究が進み、整理されて来てはいるが、明確な定義がある訳ではない。Wikipediaをはじめ、竹内太郎さんRobert Spencer氏の論文Nyankomeさんのプログのコメントなどが参考になる。個人的には第一線で活躍されている竹内さんの記事が説得力があり、要点が判りやすくまとめられていると思う。

 以下は私見。

 16世紀後半にイタリアで起こったカメラータにおける声楽の伴奏用として拡張バス弦を持つテオルボと呼ばれる楽器がリュートを元にして創作された。モノディ様式からオペラへと発展していくなかで、その原点である「古代ギリシア」の精神を尊ぶ上でギリシアの楽器の名前に因む「キタローネ(Chitarrone)」という別称(愛称)が生まれたと考えられる。
 つまり、拡張バス(指板外の低音弦)をとめるネックからまっすぐに伸びた糸倉(ペグボックス)を持ち通奏低音の伴奏に特化した楽器をリュートと区別してイタリア語で「ティオルバ(Tiorba)」と呼んだのであろう。オペラの広がりとともにヨーロッパ各地で「テオルボ(Theorbo, Théorbe)」として普及し、当地の好みに合わせて様々な亜種が派生し混乱をまねくのである。
 話をリウト・アッティオルバートに戻すと、この楽器は文字通り「テオルボ化されたリュート」であってテオルボではないである。要するに「テオルボの様な拡張バス弦をもった(独奏用)リュート」と捉えるのが一番本質をついている。
 事実この時代のPiccinini、Kapsperger、Gianoncelliなどの「di Liuto(リュートのため)」の独奏用作品は最大14コースを要する楽器すなわちリウト・アッティオルバートを想定しているのは間違いないからである。いわばイタリアにおいてはルネサンスからバロック時代の過渡期の楽器なのである。
 だが、イタリアでは、恐竜と同じように異常進化したこの楽器をもってリュートは衰退をとげる。辛うじてZamboniの「D'INTAVOLATURA DI LEUTO」1718でその残滓を留める。以前と同じく「リュートのため」とあるが、ここでは「アーチリュート(Arciliuto)」を指している。「大きなリュート」の意を持つこの楽器は、今まで述べたリュートの進化の過程から言えば、正確には「大きなリウト・アッティオルバート」と言うべきである。
 すなわちテオルボとは別に、新たにバロック様式(器楽合奏)に対応した通奏低音用に特化したリュート(リウト・アッティオルバート)が、アーチリュートなのだと思えてならない。そして、このアーチリュートは、イタリア発祥のオペラに寄生する形で生き残ったテオルボと共生し、フランス、ドイツ、イギリス各地の宮廷や奏者の好みに従って、まさに自家薬籠中の楽器として活躍したのである。ドイツ後期バロックリュートがテオルボとしばし混同されるのは尤もなことである。

以上、とりとめのないことを述べてきたが、私の件(くだん)の楽器を紹介(写真奥)。

ロンドンで修行しスペインのバルセロナ在住の製作家アレキサンダー・ホプキンス
(Alexander Hopkins)の作品。おそらくMatteo Sellasの楽器をベースにしていると思われる。

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 弦長は指板上58㎝、拡張バス弦86㎝とコンパクト、以前紹介したコーエン作の所謂ジャーマンテオルボ型バロックリュート(指板上70㎝、拡張バス弦97㎝)と並べてみると一目瞭然。安価な割りに工作精度も高く装飾もそれなりにイタリアン。例えば裏面…配色は異なるが、昔訪れ目にしたバチカンの衛士のコスチュームを想いだす。

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  某有名ギターショップで中古品として委託販売(持ち主は誰?)されていたのが目に留まった。物珍しさと…実際、製作依頼でもしない限りお目にかかることもない楽器、しかも即座にゲットできるとはまさに千載一遇のチャンス…、あまり弾かれていない美品ということもあってまさしく一目惚れの衝動買い(新車購入資金を切り崩す…あ~う~)。ところが、購入後じっくり弾いてみて癖のある楽器と知る。…あまり弾かれていないのはさもありなん。お蔵入りになりそうなところが、不注意で壊したことが幸いする。修理ついで奥清秀さんに、容易にできる範囲で調整してもらって以前よりも弾きやすくなったのだ。本当はボディの改修をしてもらいたかったが、明らかに素人目にもとても大がかりになりそう(作り直すに等しい?)なので、これは断念。

 ペグの回転がよくなったことで、調弦のストレスが格段に和らいだのが何よりもうれしい。手狭な書斎にてそのコンパクトさも見直され触れる機会も多くなった。これを機会に、この楽器でイタリア初期バロックのリュート音楽(…苦手なイタリア式タブラチュアも)に慣れ親しまん…。
 とはいっても、その弦の多さと一部張られているガット弦に「あ~も~」と日夜格闘する宿命からは決して免れない…ナイルガットやシングル仕様にする手もあるが…。

   しっかり元は取らねばと、妙に偏屈になっている藤兵衛である。

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リウト・アッティオルバート入院す

 例の故障したリウト・アッティオルバートを奥清秀さんの工房に修理に出した奥さんのブログ で掲載中の解体されたその姿は、リュート属の中でも最多の弦数がある楽器だけに哀れさも一入…。(お世話おかけしますが奥さんよろしくお願いいたします。)
 「テオルボ化されたリュート」という意味?のこの楽器は意外に小型で、装飾華美なものが多いようだ。そのため、女性が嗜むために開発された楽器なのかな?と想像してしまう。いずれにせよPiccininiなどのアーチリュートのソロ曲を拙宅の狭い書斎で弾くにはもってこいのサイズである。
 そのPiccininiやKapspergerのトッカーター、カンツォーネ、リチェルカーレなどの作品群は、ヴァイスやバッハ時代のバロック音楽になれ親しんだ自分にとってはまさしく異次元の完結した世界である。フランス式タブラチュアと比べるとあまりにも無機的なイタリア式タブラチュアから生み出される変幻自在、自由奔放な音楽には衝撃を受けた。そして色々とCDを聴くたびにブラックホールのような魅力に吸い込まれそうになる。…と言っておきながら「イタリア式タブラチュアに今一つ馴染めない」とか何とか言って手をこまねいている。そのくせ、昨年の定演にて「Zamboniのソナタ第9番」全曲を披露した卑怯者でもある。Zamboniのそれに匹敵するぐらい魅力的なチャコーナや馴染みやすいガリアルドなどをPiccininiはテオルボ(キタローネ)のために書いている。超弩級のテオルボだと楽器を手に入れること自体文字通り身構えてしまっていたが、独り楽しむ分には修理に出したこの楽器の調弦(弦の張り方)を工夫して割りきればよいのかな?…と楽器が入院して今更ながら気づく藤兵衛である。

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