前回に引き続きコンティのカンタータとパロックリュートの関係についての紹介。
(仕事にかまけて実に久しぶりの記事と相成る)
Francesco Bartolomeo Conti : "Ⅷ Cantate Con instromenti"
フランチェスコ・バルトロメオ・コンティ作曲「8つの器楽つきカンタータ
Ⅰ:Cantata prima a voce sola,"Lontananza dell'amato" chalumeaux, flute allemande ou hautbois, violini sordini, leuti francesi e basso
Ⅱ:Cantata seconda a voce sola,"Ride il prato"
flauto o chalumeau, violini, leuti e basso continuo
Ⅲ:Cantata terza a voce sola,"Con piu lucidi candori"
chalumeaux, due violini, leuto e basso continuo
Ⅳ:Cantata quarta a voce sola,"Vaghi augelletti"
chalumeaux, due violini, leuti e basso continuo
Ⅴ:Cantata quinta a voce sola, "La belta che il core adora"
chalumeaux, violini,leuti e basso continuo
Ⅵ:Cantata sesta a voce sola,"Gira per queste selve"
con violini, hautbois e basso continuo
Ⅶ:Cantata settima a voce sola, "Fugga l'ombra tenebrosa"
con violini, hautbois e basso continuo
Ⅷ:Cantata ottava a due voci,"Fra questi colli ameni"
con violini, hautbois e basso continuo
ウィーンの国立図書館所蔵のファクシミリがS.P.E.S.社により4曲ずつの分冊で出版されている。作曲年代は不明だが、コンティがウィーンの宮廷で活躍した1713~1725頃、宮廷で演奏されたものと推定される。彼は生涯オペラ26曲、オラトリオ10曲、ミサ4曲、そして70以上のカンタータを作曲したとされるが、その実像は埋もれたままである。以前は、バッハが31歳のヴァイマール時代末期1716年に、コンティのカンタータ"Languet anima mea(わが魂は病み)"の総譜を筆写した…参考:バッハ辞典(東京書籍)…ということで語られるだけであったが、近年その作品の一部に光が当てられるようになった。このカンタータ集もコンティの優れた才能をしめす佳作である。
いずれも、ソプラノ独唱(第8曲のみデュオ)と通奏低音と器楽伴奏つきのレシタティーボとアリアによる一般的なイタリア様式のカンタータである。しかし、(弱音器付き)ヴァイオリンドイツ式フルート(フルート・トラヴェルソ)、リコーダー、オーボエといった楽器にシャリュモー(クラリネットの原型)やリュートが用いられているところに大きな特徴がある。下記参照
----各カンターター曲目及び楽器編成(6曲以下省略)-----
略語 Clm:シャリュモー lt:リュート vn:ヴァイオンリン fla:フルート・トラヴェルソ fl:リコーダー ※各曲通奏低音付き
Ⅰ:
- Aria ニ短調 4/4 clm, fla(ob), vn, lt
- Recitativo
- Aria ヘ長調Allegro 4/4 clm + vn, lt
- Recitativo
- Rittor & Aria ニ短調 3/4 tutti(unissoni),lt
Ⅱ:
- Aria ヘ長調Allegro 4/4 Vn + fl(clm), lt
- Recitativo
- Aria ハ長調 3/8 fl, lt
- Recitativo
- Aria ニ短調 1/2 fl solo(slm)
- Recitativo
- Aria ヘ長調 3/4 fl, lt
Ⅲ:
- Aria ハ長調 4/4 clm, 2vn, lt
- Recitativo
- Aria ホ短調Adagio 4/4 clm solo
- Recitativo
- Aria ハ長調Allegro assai 3/8 unissoni, lt
Ⅳ:
- Recitativo vn1, vn2, lt
- Aria ヘ長調 4/4 clm1, clm2, lt
- Recitativo
- Aria 二短調Adagio 3/8 clm solo
- Recitativo
- Aria ヘ長調 3/4 tutti, lt
Ⅴ:
- Aria 変ロ長調 4/4 clm, vn, lt
- Recitativo
- Aria ヘ長調non presto 1/2 unisson
- Recitativo
- Aria 変ロ長調 3/8 tutti, lt
コンティーが奏でるこのカンタータの音楽は、シャリュモーの牧歌的な響きが自然や田園を賛美した歌詞の内容にふさわしいく全体的に明るくさわやかである。各アリアの調性もヘ長調、変ロ長調、ト長調とそれにふさわしものを用いておりフランス式リュート(ニ短調調弦のバロックリュート)がよく響き、さりげなくきらびやかな彩りをそえる。
曲集は、リュートを用いた第1~第5曲、ヴァイオリン、オーボエを用い定型化された第6~第8曲に大別される。また、前者のグループでも第5曲は先の4曲とやや作曲の様式に時間的な隔たりが感じられる。リュートは幾つかの管楽器のソロが用いられるものを除いてアリアにおいてヴァイオンリンTuttiとユニゾンで奏でられるが、一つの独立したオブリガード楽器としてフランス式タブラチュア譜のパートが割り当てられている(レシタティーボは第4カンタータの冒頭にのみリュートオブリガードパートがある)。しかも、バス(コンティヌヌオ)のパートも組みこまれており、各所でヴァイスの独奏曲以上の高度な技術が要求される。イタリア人のテオルボ奏者がフランス式のバロックリュートを用いること自体が奇異であるが、ウィーンでコンティの同僚のフックスに学んだゼレンカの『エレミアの哀歌』などにシャリュモーの使用例がみられるようにウィーンという環境がそうさせたのであろう。
しかし、残念ながらコンティの器楽曲はシンフォニア2曲とマンドリーノのためのソナタや小品が残っているのみでリュートまたはテオルボの独奏用の作品は知られていない。幸いなことにこのカンタータの最初の4曲には部分的にAB形式の舞曲的な部分があり、その部分を単独のリュート独奏曲として演奏することが可能である。ちなみに、タブラチュアの装飾記号などは一般的なものであるが、誤記が余りに多く、スラーなども意図が不明なものも多いし前後で一貫性のないものが散見する。そもそもリュートを始め単語の綴りもかなりアバウト…ここら辺がイタリア人の本領発揮といっては失礼なのだが…。
今回はそのうち一番独立性の高い第1カンタータの最後のアリアの冒頭につけられた序奏的な器楽合奏部…Rittor(立っての意?Ritornèlloの略?)という意味不明の表題?…から、私がおこしたタブラチュアを紹介したい。
世界初公開?? バロックリュートのためのコンティのメヌエット!!
フランス流11コースの楽器で演奏可能。第7及び第15小節目の第3拍目のスラーは特殊な用法であるがそのままにしてあるが、アリア部分ではスラーは存在していない。逆にアリア部分などを参考にして加えた装飾音符もある。メモ程度(書きなぐり御免)に起こしたものなのであくまでも参考に…。ささやかながらもコンティのリュート奏者としての技量が垣間見ることができれば幸いである。機会があれば、その他も紹介したいが…。いつになるやら
やっと一つ仕事が峠を超えブログ再開となった藤兵衛であった。
(そのくせ、その間ガンバやリュートとは毎夜のお付き合い)
この稿,校訂中…
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