秋の夜長はガンバと羊飼い
秋も深まり、夜長を如何に過ごさん…。
と問うまでもなく古楽器三昧。
定番のバロックリュートやヴィオラ・ダ・ガンバのみならず普段ご無沙汰のバロックギターなども楽器も膝に乗せる。
しかし、つれなくしていた楽器程、その楽譜(タブラチュア)の解読に悩まされ、結局定番の楽器に回帰してしまう。そんな時は、どうしてもパァ~と気分転換ができる曲が弾きたくなる。う~ん、でもヴァイスの『不実な女』ではちょっと…と思いあぐねていたところ、先日この組曲に含まれているミュゼットを調べていて興味をもったニコラ・シェドヴィル(Nicolas Chedeville 1705~1782)なる人物を思い出した。
彼は、フランス貴族(宮廷)の田園趣味に合わせ、このミュゼットという楽器の普及に尽力している。
この楽器の演奏家としても優れ、その作品どころか楽器も製作改良している精力家だが、音楽史においてはマイナーな存在である。
だが、年季のはいったバロック音楽ファンなら、彼の曲を知らないはずがない。皆川達夫氏が担当し日本にバロック音楽を普及させたあの往年の名番組NHK-FM 『朝のバロック』のテーマ音楽が彼の作品なのである。
この曲は長年ヴィヴァルディ作曲の「ミュゼット(ヴィエール)、フルート、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集『忠実な羊飼い(Il Pastor Fido)』Op.13」として親しまれていた。月~金曜日朝6時に流れるそのいかにも牧歌的なフルートの調べ(演奏者はランパルだったか?)は、その6曲からなるソナタ集第2番ハ長調の第1楽章プレリュードである。このソナタと最後の第6番ト短調のソナタはリコーダーでもよく演奏され、私も昔よく吹いていた。
今では、ミュゼットを普及させんがため(あるいは一攫千金を夢見て)、有名なヴィヴァルディを語って1737年に彼が出版したことが判明している。いかにもうさん臭い話ではあるが、この2番のソナタの素朴な牧歌的な美しさには魅了される。
久しぶりにこの曲の楽譜を探しだすが、今更リコーダーでもなかろうとヴィオラ・ダ・ガンバでトライしてみた。思った以上に豊かに響く上に、飾り気のない単純な旋律は何と弾きやすいことか。
そこで、腰を据えてガンバ用に楽譜をおこしすことにした。ハ長調からヘ長調に移調して音域をあげることでより明るく演奏面でも容易にすることが出来た。
懐かしの第1楽章
第4小節の後半は、こうでなくては…とランパル流?
う~ん、ガンバによく馴染みとても幸せ。
第2楽章
これまた軽快。冒頭の音型(ボーイング)はバッハのカンタータのアリアにも見られる胸踊る喜びの表現。フレーズの繰り返しがいかにもヴィヴァルディらしい。
第3楽章 サラバンド
リコーダーでは、いま一つ表現しきれなかった息の長さが、ガンバでは味わい深く音をつなげることができる。美しさ再発見!
そして最後の第4楽章
単純な舞曲風で乗り乗りイケイケと思いきや、後半部はかなりエキサイト
お~っ、唐突に現れる何と弾きがいのある16音符
感極まったかのように飛び跳ねる。
こうした単純なフレーズの執拗な繰り返しはあのヴァイスのリュート曲にも通じるものがある。
しばらく、このソナタにはまりそう。
秋の夜長の癒しを見つけた藤兵衛であった。
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