今日は、先の土曜日の休日出張(ゆえあってクロスバイクで往復100㎞あまりの道行と相成った)の代休日。写真は出張先でとった風景。
一日置いて出張の疲れはすっかり取れたので平日のサイクリングを決め込もうとしたが、昨日までとうってかわって朝からかんかん照りの夏が到来。紫外線も強そうなので今日はおとなしく(?)、自宅で久しぶりにヴィオラ・ダ・ガンバ三昧。バロック末期のエマヌエル・バッハのガンバ・ソナタの何と美しいことか…。でも速い楽章には歯が立たない(笑い)。
ついでとは言ってはまことに失礼な話だが、この乗りで父親の大バッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタを第1番から弾いてみる。音譜は細かいが盛期バロックの手法はやはりとっつきやすい。逆に息子の作品よりも緩楽章が難しい感じ…。身近にチェンバロの伴奏相手がいればさぞかし楽しいことか…あぁ~。
気を取り直して口直しにCDを聞くことにする。
何とまあ、大バッハのヴィオラ・ダ・ガンバソナタ集だけでもラックから数枚見つかった。その他にバッハ全集のものやどこかに紛れ込んでいるものもあるはずだ。
とりあえず見つけたものを、見渡しているうちに、あることに気がついた。どのCDも全3曲以外に「おまけ」がついているのである。
もともとバッハのヴィオラ・ダ・ガンバ ソナタは、何らかのトリオソナタをヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロにバッハが編曲したものだとされる。事実、第1番にはフルート2本と通奏低音のヴァージョンが実在する(これも何らかの原曲からの編曲とする説がある)。
そこで思いつくのが オルガンのための6つのトリオソナタ(BWV525~530)である。
興味深いことに、このトリオソナタのうち第4番ホ短調BWV528の第1楽章をバッハは教会カンタータ第76番のシンフォニアとして、オーボエ・ダモーレとヴィオラ・ダ・ガンバと通奏低音の形態で用いている(カンタータの方からトリオソナタに取り入れたらしい)。
オリジナル3曲と同じくヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロで第4番ホ短調BWV528全楽章を演奏しているのがこのCDである。
G.BalestracciのガンバとB.Rannouの演奏。
ガンバは第1楽章と同じく残り2楽章も2ndパートを受け持ち、オリジナルの曲と遜色なく自然に流れていく。とても渋くガンバの持ち味をうまく出している。全曲オーボエ・ダモーレとのトリオでも聴いてみたい。
そして、こちらは大御所、サヴァールとトン・コープマン。
「おまけ」は同じくオルガンのトリオソナタ第5番。
おまけにもかかわらずCDの冒頭で演奏される。第4番と銘うっており、最初は誤植かと思ったが、オリジナルの第1~3番に加わるべきシリーズと割り切ってのことだと知る。これも、先の例と同じように一貫して2ndを奏でる。2つの明るい急楽章と、それにはさまれた深い陰影を落した短調の第2楽章とのコントラストがヴィオラ・ダ・ガンバによってより明確になる。
さらに、変わったところでは、フルートソナタやヴァイオリンソナタからの編曲である。いずれも前のものと同じくトリオソナタ的要素をもつ作品を吟味している。
まずは有名なフルートソナタロ短調BWV1030をアレンジしたもの、というよりも利用したもの。
演奏はこれまた大物。 ガンバのマンソンとピノックのチェンバロ
この曲には、その前身の曲と想定されるト短調のチェンバロパート譜が残されている(BWV1030b)。その音域から一般にオーボエソナタとして演奏されることが多いが、古色蒼然とした響きからしてこれも、さらに古いトリオソナタにたどり着くという説がある。こうして聴くとヴィオラ・ダ・ガンバのソナタあるいはコンソート(合奏曲)の可能性も捨てがたい。このCDではオリジナルのこれまた渋い第3番ト短調BWV1029(確かタヴァナー・コンソートがヴィオラ・ダ・ガンバを中心とする協奏曲に復原したCDを出していたっけ…)を冒頭に置き、「おまけ」のこの曲を最後に演奏することによって意味深長さを増す。
その次は、「おまけ」にフルートソナタBWV1019からの編曲がついたこれ…。
ガンバはJ.M. Quintana C.Frischのチェンバロ
この「おまけ」の原曲は、バッハのフルートソナータ中、チェンバロソロをふくむ異色の5楽章形式。しかも、カンタータBWV120のアリアに転用した楽章やチェンバロパルティータ第6番BWV830のクーラントやガヴォットに転用された楽章をふくんだものを含めいくつかの異稿が存在する試行錯誤を繰り返した特異な曲である。さすがにバッハがヴィオラ・ダ・ガンバを想定していたとは言い難いが、聴いてみると、これもありかなと思えて中々面白い。
ラストは、「おまけ」てんこ盛りなこれ。
演奏者は写真参照 …もう投げやり状態(笑い)…ウムラウトめんどくさいし…。
バッハのオルガン曲に偽作(他者の作品の編曲)と思われる単楽章のトリオがいくつかある(BWV583~586)。そのうちオリジナルの可能性もあるニ短調BWV583と、カンタータBWV166の第2曲のアリアを後世の何者かが編曲したと思われるBWV584がガンバとチェンバロで演奏される。加えてチェンバロソロで、チェンバロ用のソナタイ短調BWV967(偽作?)と同ソナタニ長調BWV965が挿入されている。後者はバッハ初期の作品。最終楽章に「めんどりの鳴き声をまねた主題」が使われているが、後年のバッハらしさ?は微塵もない軽いのり。いずれにせよ(オリジナル曲ですら)滅多に聴けない珍品「おまけ」で誘惑(お願い買って!)といったところか? 私もまんまと乗せられたわけだ(笑い)。
おっと、ここで思い出した!オルガン・トリオソナタ全6曲をヴィオラ・ダ・ガンバで演奏したCDを買っていたはずだ。といっても ラックから探し出すのも、久しぶりの音楽ネタでくたびれたので今日は打ち止め…真打ち登場は日を改めてということで…。
「おまけ」が主役で本体のチョコが捨てられてしまうという悲劇的なお菓子を思い出した藤兵衛であった。
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