神々の楽器~再誕
ついに出た!
『リュート~神々の楽器』改訂版 菊池賞 著 水戸茂雄 監修 東京コレギウム 出版
ヴァイスやバッハと同時代に活躍したリュート奏者パロン(Ernst Gottlieb Baron1696~1760)がリュートについて詳しく述べた名著である。
2001年に初版が発売されているが、数年前にリュートを再開した時には既に絶版状態であった。その昔、『現代ギター』に高野紀子氏による抄訳が紹介されていたが、当時のリュート事情を知る上で貴重な史料としてその内容の素晴らしさにその全貌を知りたいと常々その再版を待ちこがれていた。
まさに満を持してすぐさま、出版元の主にチェンバロに関する書籍や楽譜を扱っている東京コレギウムから取り寄せた。
程なく手元に届いたが、その荷をほどき繙く前に驚愕の事実に遭遇していた。
オンラインで購入後、同社のブログを発見し、そこであのバロック時代の音楽理論家として有名なマッテゾンがリュートの天敵であることの記事を発見。
バッハのオルガン演奏や対位法の知識を高く評価しているマッテゾン(Johann Mattheson 1681~1764)
が、ぼろくそにリュートをけなしている!
「猫なで声のリュート」はまだしも、リュート愛好家にとってここで紹介することもためらう.くらいけんもほろろ…マッテゾンとはかくも了見の狭い人間だったとは…。
…う~ん。彼は若いころ知り合ったヘンデルに因縁をつけて決闘騒ぎになって殺されかけたことがあったと聞く。さもあらん…。もっともその時、マッテゾンが殺されていたなら、全身全霊を注いでリュートを擁護したバロンのこの名著も生まれなかったであろう…(笑い)。
傑作の原動力は好…悪敵手?…バッハとシャイベとの関係も然り? ともかくヘンデルとはよりを戻すも、当代一流のヴァイスを始め多くのリュート奏者の恨みを買いながらもマッテゾンは生き長らえた。
ちなみに、謎の技法「Zug」 に関する水戸氏の解釈や付録のマッテゾンに宛てられたS.L.ヴァイス(1687-1750)の彼への反駁の書斡も貴重!
何よりも、一部の人間にはバイブルにも等しいながら、世間一般にはとてもマイナーな書物を日本語で読めることができることはまさに奇蹟。出版(再版)に携わっていただけた関係者各位に感謝!… リュートに興味のある人是非一読を!
秋の夜長、ジックリつきあえる書物に出会った藤兵衛であった。
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