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「不実な女」と「めぐり逢う朝」?

 相変わらず忙しい。ブログを書く気力も失せていた。

 10数年前、転勤後の無理がたたり、体調を崩し手術し一ヶ月ほど入院生活をするという苦い経験をしている。(すぐに全快し無事に復帰)

 その折り、ある同僚から「忙中閑あり」というアドバイスをいただいた。ところがその彼も、転勤後、体調を崩したという笑えない顛末…宮仕えの身の厳しさを知る。

 しかし、その言葉は今も座右の銘となっている。こういう時こそゆとりをつくらねばと…。

 というわけで、先日の休日、戸棚の肥やしになりかけている楽譜を取り出し何か面白い曲がないかと発掘作業にひねもす没頭した。

…発見の一つ。

 17世紀後半フランスで活躍したヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の巨匠、サント-コロンブ氏(Monsieur de Sainte-Colombe)の"Concerts à deux violes esgales(2台のヴィオールのための合奏曲)"の最後から2番目の第66曲ハ短調の表題に目が留まった。

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 "L' infidelle"すなわちヴァイスの有名なリュートソナタイ短調と同一の表題である。

    残念なことに数小節が欠落しているので演奏される機会も少ない。…しかも、作曲者の知名度・音楽の地味さがそれに拍車をかける。

"L' infidelle"は一般に「不実な女」と訳されている。

 「異教徒(不信心者)」と意訳する例もあるが、この発見で、やはり前者の訳の方がより自然であるだろうと納得した。

 サント-コロンブといえば、映画『めぐり逢う朝』(…DVDを購入し何度も観た)での「亡き夫人の面影にひたる世捨て人」というイメージが強い。そこからの連想でなく、こういった女性定冠詞(la)をつけて「~な女」と表する副題は、その映画に出てくる彼の弟子のマラン・マレ(Marin Marais 1656-1728)や、彼の後輩であるクラブサンの名手フランソワ・クープラン(François Couperin 1668-1733)などに頻出する。フランス宮廷音楽の洒落た伝統である。フランス器楽音楽の様式はドイツに伝わり、バロック組曲として完成されていく訳だが、「よき家庭人バッハ」をはじめとする生真面目なドイツ人気質にはこの副題に関する伝統はあまりお口にあわなかったようだが、時折伊達者が思い出したようにフランス流を気取っている。ヴァイスの用例もその一例なのであろうと軽く考えてしまう。

 マレやクープランに"L' infidelle"の表題をもった曲はなかったような気がするが、面白そうなので確かめてみようと思う。

 ちょっとした気晴らしを見いだした藤兵衛であった。

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