バッハとリュートあれこれ(3)~新バッハ全集とバッハ作品主題目録
新バッハ全集…。
バッハ協会の全集刊行完成の後をうけて1900年に新バッハ協会創立された。全集の再検証を踏まえ新たなる研究を盛り込んだ『バッハ年鑑』を毎年発行し次なるバッハ研究の礎となるべく活動を行った。具体的には旧全集に追加すべき作品および資料の再検討・新発見に基づく校訂(新版)の追加出版を意図していた。旧バッハ全集の刊行により様々な研究成果が蓄積していくが2度の世界大戦、ドイツ分断が足枷となりなかなか形にはならなかった。そして戦後、1950年のバッハ没後200年を機に満を持してのバッハアルヒーフ財団(ライプチヒ)による「新バッハ全集」刊行着手と相成ったのである。
その際、ヴァルフガング・シュミーダー(Walfgang Schmieder)がジャンル毎に分類整理しその年に発表したバッハ作品番号(Bach-Werke-Verzeichnis)略してBWV番号が採用された。1080の作品の他にそれぞれの異稿はBWV1006aのように番号の末尾にアルファベット小文字を付加し、189曲の消失曲、疑作または偽作?と見なされる付録(参考)作品はAhn.番号を付して整理されたのである。1961年にシュミーダーにより『バッハ作品主題目録』が別途出版される。
W.シュミーダー 『バッハ作品主題目録』(プライトコプ&ヘルテル社)扉
注目すべきは、無伴奏ヴァイオリン作品の異稿として「室内楽作品」に掲載されたBWV1006aを除く、BWV965-1000の6曲がこの『バッハ作品主題目録』で、「リュートのための作品」というジャンルに分類されたことである。
以下『バッハ作品主題目録』のリュート曲に関係する部分を掲載する。
ご覧のように原典や資料及び当時知られる論文や出版物について掲載している。下から4行目にブリューガーの名前が見受けられる。
(以下、楽譜部分のみ掲載)
以下は「室内楽作品」BWV1001~に掲載されたBWV1006a
ただし、この作品番号(目録)は、それまで蓄積された作曲年代判定などの様々なバッハ研究の成果を反映しているわけではなく(上記のBWV1006aの検証分類もその一つ)、その後、明らかに偽作とみなされた欠番や分類の間違いも少なからず散見される。(例:カンタータBWV217-222の大きな欠落など)1990年の小改訂(第2版)が行われBWV番号は1120、Anh.番号は208までに拡大されている。
この目録のおかげでこの段階でバッハのその時点で伝承されている作品および資料、それに関する研究や出版物(楽譜)などの概要がはっきりと浮かび上がってきた。あとは順次発刊される「新バッハ全集」の成果すなわち「公式版」を待つのみとなった。だが、当初6年で完成の予定が、綿密な資料の検討・校訂がなされた結果全集の刊行と並行しての『校訂報告』の出版の進行も遅れがちとなり、結局半世紀という時間と労力をかけ2007年に『新バッハ全集』計103巻は完結した。
ただ残念なことは出版元のベーレンライター社の出版段階での校訂の杜撰さ(誤植の多さ)が指摘され、楽譜自体の信頼性が揺らいでいる。また『ロ短調ミサ』のように採用された版への新たなる批判検証が叫ばれているものも少なくない。
ちなみに、1985年、バッハ研究家のシュルツェ(Hans Joachim Schulze)およびヴォルフ(Christoph Wolf)により新たな作品目録「バッハ・コン
参考:角倉一朗『バッハ作品総目録』バッハ叢書別巻2(白水社)
まとまりがつかず改訂を迫られた藤兵衛であった。
<2008年10月18日 改訂>
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