« 妖しい夕焼け | トップページ | ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ »

リュート協奏曲~その7 ハイニヒェン

ハイニヒェンの「(テオルボをふくむ)協奏曲」について紹介してみたい。

ヨハン・ダーフィト・ハイニヒェン(Johann David Heinichen 1683-1729)

 ヴェネツィアで音楽を学んでいた彼は、ケーテンのレオポルド公と知り合い1717年に音楽教師として招かれるが、ほどなくザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世に引き抜かれてドレスデンに移り40歳半ばで病死するまで宮廷楽長を努めることとなる。それまで彼はドレスデン宮廷音楽を当時一流と知られたいわゆるドレスデン風に染め上げたのである。しかし、バッハや通奏低音の研究に関連して彼の名前があがることがあっても作品自体は長いこと忘れ去られていた
 ちなみに彼がケーテンに招かれた1717年はバッハがケーテン宮廷楽長に任命された年でもあり、バッハのドレスデン初訪問の年でもある。その時の2人の関係はよくわかっていないが、後ハイニュヘンが1728年に編纂した『作曲における通奏低音』(1711『通奏低音教程』の改訂版)をバッハが自宅で委託販売しており少なくともバッハが彼から影響を受けていたことは間違いない

 1992年録音のラインハルト・ゲーベル率いるムジカ・アンティカ・ケルンのCDによって、当時まだ無名に近いハイヒェンの埋もれた協奏曲の全貌が明らかにされた。

Heini_con

この折り便宜的に「ドレスデン協奏曲」と命名された14曲余の作品群の内訳は以下の通り…

  • 3楽章形式8曲(うち2曲はSerenata、Sonataの表題をそれぞれもつ)
  • 4楽章形式4曲(うち緩-急-緩-急のコレルリ様式は一曲のみ)
  • 5楽章および6楽章形式それぞれ一曲

  そして、全て長調で書かれたそれらの曲以外に、唯一の短調の曲と推定される断片楽章(Vivace)が一つ伝わっている。

 全編にわたり弦楽合奏だけのものは存在せず、フルート・トラヴェルソ、ブロック・フルーテ、オーボエ、ホルン、ファゴットなどの管楽器や独奏ヴァイオリンを多彩に巧みに選択配置し、その生き生きとしたリズムと相まって他に類をみない独自の華やかな世界を構成している。何年前になるか忘れたが、藤兵衛は「こんな世界があったのか!」と衝撃をうけたのを覚えている。

 その中にテオルボを含むフルート・トラヴェルソ、オーボエ、ヴァイオリン、チェロのコンチェルティーノ(独奏楽器群)と弦楽合奏(但し2楽章以外は第1第2ヴァイオリンはユニゾンで進行)からなるAllegro molto-Adagio-Allegroの3楽章形式の二長調の協奏曲(作品整理番号Seibel 226)がある

 作曲年代は不明だが、ヴァイスをはじめピゼンデルやヴェラチーニ(Vn) 、ビュッファルダン(Fl)、リヒテル (ob)らの名だたる名手が演奏に関わらないはずがない。とすると ヴァイスがドレスデン宮廷リュート奏者に正式就任した1718年以降作曲された可能性が強い。(1717年までに2度ほど彼はドレスデンを訪問しているが…)

 何となくバッハのブランデンブルク協奏曲第5番の第1楽章を思わせる主題をもつ第1楽章Allegro moltoにおいてテオルボは独奏楽器群のなかでもっとも長い18小節にわたるソロを演じ、その後も他の楽器とも競い合う。

Heicon_1t
      テオルボの長いソロの出だし
Heicon_1s_2

 ニ短調に転じる第2楽章Adagioでは、フルートとオーボエとヴァイオリンが旋律の綾を織りなし、テオルボはリピエノから独立した音があるものコンティヌオ的な役割に甘んじる(本領発揮ともいえる)。その証拠に各所に和声数字が付加されている。

Heicon_2t  

第3楽章Allegroにおいて冒頭のリトロネロの直後にテオルボは再び14小節のソロで活躍をする。しかし、その後はヴァイオリンが主導的な役割を果たしていく。

Heicon_3t

              テオルボソロの冒頭

  Heicon_3s

 他の協奏曲と違わずドレスデン楽団員が華を織りなす粋な構成となっている。バッハのブランデンブルク協奏曲2番BWV1047と構成的に通じるような構成に思われるが、似て非なるハイニヒェン独特の世界である。いずれにせよリュートの世界にとってはテオルボの特性を踏まえてヴァイスのヴィルトオーゾ性が伝わってくる重要な作品に間違いない。ヴァイスの世界を、彼の作品だけでなくドレスデン宮廷から見るとまたちがった面白さが見えてくる。この協奏曲のミニチュアスコアが市販されるということも驚きだが、

Heinichen_sco_2

ハイニヘェンのミサ曲やオペラなど声楽曲の出版や上演・録音も次々と進んでいるらしい。ヴァイスとコンティヌオ(テオルボ)との関係を知る上で楽しみである。そのうちハッセとヴァイスの関係に触れたいと思う。ついでにブランデンブルク協奏曲をはじめバッハとドレスデンとの関係も…と欲張る藤兵衛であった。

|

« 妖しい夕焼け | トップページ | ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ »

ドレスデン宮廷楽団」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/517741/41987335

この記事へのトラックバック一覧です: リュート協奏曲~その7 ハイニヒェン:

« 妖しい夕焼け | トップページ | ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ »