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リュート協奏曲~その5 ヴァイスの協奏曲

 以前紹介したが、ヴァイスのアンサンブル曲は少なくとも19曲が伝わっていると聞く。残念ながらほとんどがリュートパートのタブラチュア譜(またはデュオパート片割れ)しか残っていない。膨大な作品が伝わるリュート独奏ソナタでのヴァイスの偉大さについては周知のところである。
 しかし、考えてみればヴァイスの演奏家としての活動は、彼の所属するドレスデン宮廷楽団員のテオルボ奏者としての日常的なノルマの比重も大きいことを忘れがちである。何しろ当時のドレスデン宮廷の楽団といえばピゼンデル(Vn) 、ビュッファルダン(Fl)、ハンペル(Hn) 、ゼレンカハイニヒェンハッセグラウンなどの名演奏家や作曲家がひしめく、かの大バッハも度々接触を持ちその一員ならんと嘱望もしたヨーロッパ最高レベルの楽団である。せっせとリュートソロ演奏で奉仕しつつ、彼ら楽団員の名人芸をコンティヌで支えたのがヴァイスなのであり、ヨーロッパ各地を遊行しドレスデン宮廷楽団の名声を広く宣伝した彼が楽団員の中最大の高級取りと言われた所以である。
 これらの協奏曲やフルートデュオは、彼らドレスデン宮廷の名手たちが演奏に関わった可能性は極めて高い。特にフルートデュオはビュッファルダン(Buffardin)によってフルートパートが演奏されたのはまちがいない。近年、ドレスデン宮廷の音楽家たちが次々と復活を遂げている中、協奏曲のオーケストラやフルートパートの消失はまことに残念なことだ。幸運なことにリュートタブラチュアが残っているものの、その性質上ほとんど日の目をみない状態であった。しかし、Peters版を始めとして、色々な復元が試みられ録音もされつつある。

 故カール=エルンスト・シュレーダー氏による復元が、以前から藤兵衛ものぞいている「リュート狂によるリュート愛好家のための総合リュート情報サイト~リュート,リュート,リュート!!!」で紹介されている。復元されたタブラチュアは以下で入手できる。貴重な財産である。
   http://www.asahi-net.or.jp/~ia8k-ynd/Charlie/index.html

バルト氏との録音も残されるいるがCDは残念ながら現在入手困難で耳にできないweep…。聴きたいよ~sad                                

ということで藤兵衛が紹介するCDがこれ。
 
   Silvius Leopold Weiss Lute Concerti

  Weisscon

全曲が、このCDでリュートを奏するMr.Richard Stone によって復元(再構築)されたものである。2004年の発売であるが、なぜかあまり話題になっていない。
  amazonのこちらの頁やHMV()で購入可。
 ※ちなみに両方でレヴューを書いたのは恥ずかしながらこの不肖藤兵衛である。coldsweats01 

                                                    
作品番号順に並び替えて曲目を紹介。 

  • Concerto for lute and flute in B flat major, SC 6 Adagio-Allegro-Grave-Allegro
  • Concerto for lute and flute in F major, SC 9  Adagio-Allegro- Amoroso-Allegro
  • Concerto in F major, SC 53 Largo-Allegro-Largo-Allegro
  • Concerto grosso in B flat major, SC 57 Allegro-Largo-Allegro
  • Concerto in D minor, SC 58 Largo-Allegro-Largo-Allegro Assai
  • Concerto a cinque in C major, SC 90 Allegro-Andante-Tempo Di Munetto  

  最初の2つはロンドン版、次の3つがドレスデン版、最後のものはアウグスブルグに伝わるリュート手稿譜からのものである。
 ロンドン版は、Peters版とは全く異なる新たな復元。個人的には、より技巧的に復元された今回の版に軍配をあげたい。bell
 ドレスデン版のものは、J.S.Weissの協奏曲SC55とデュオと想定される曲(第1パートの指定書きのあるSC54・56・60と第2パートの指定書きのあるSC59)以外の「表題およびパート指定のない曲」(CDの題名は推定である)を復元している。リトルネロの部分にあたるリュートが沈黙する数字付きの長休符が各所にみられる3楽章形式のSC57は明らかに協奏曲と推定できる。しかも、かのビュッファルダンのフルートやピゼンデルのヴァイオリンがさりげなく競いあう姿が思い浮かぶ合奏協奏曲として復元されている!一方、明確にリトロネロに該当するその部分が見当たらないSC53とSC58はリュートデュオまたは他楽器とのアンサンブル曲である可能性が強いが…コレルリ的な教会ソナタ形式の協奏曲にまとめあげられている。

 最後(CDでは冒頭の曲)のアウグスブルグ版には「2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを伴うリュートのための5声の協奏曲」と明記されており(写真)、確実にヴァイスの本格的なリュート協奏曲と見なすことができる。(伝承の由来は不明)

Aug_weisscon
 

第1楽章
(写真)において、
                         冒頭部

Aug_weisscon_tut_3

                          ソロの出現部

Aug_weisscon_sol_3

Mr. Stoneは、残されたリュートパートのモチーフからは想像もつかない(バッハのブランデンブルグ協奏曲第3番やヴィオラ・ダ・ガンバソナタ第3番の第1楽章の冒頭を彷彿とさせる)長短々の溌剌としたリズムの素晴らしいリトロネロ主題を紡ぎだし、それを踏まえたリュートのカデンツァも付け加えられている。情緒豊かな第2楽章をふくめ基本的にはヴィウァルディ様式を踏まえている。
 第3楽章の愛らしいメヌエット(写真)は
Aug_weisscon_min_2

ドレスデン宮廷好みといったところかな?ドレスデンの宮廷楽団員のほのぼのとした競演の様子が目に浮かぶようだ。Mr.Stoneは、このメヌエットの出だしをリュートソロで再現しヴァイスの個人芸のご披露というシーンを演出している。面白い試みだが、冒頭主題提示後に常套的に初めてリュートソロとの指定があることと(上の写真3段目)、冒頭8小節のリュートの和音の配置(旋律としては弱い)からみて、リュートソロで始まることは私としては否定したい。藤兵衛的には、tuttiだと重くなるので、リュートの旋律にピゼンデルを想定したヴァイオリンソロで上声の旋律を絡ませてみるのも一興と思うが…これ如何?

 というように、好き嫌いや再現方法に異論があって当然。わたくし的には協奏曲という形でヴァイスの名人芸の姿を垣間見る一つの偉大な試み(種々の協奏曲形式で構成するという心憎さをふくめ)大いに評価したい。アマゾンのレビューで触れたが、一部のギタリストがこだわる「バッハの曲は一字一句たりとも変えてはならない・付け足してはいけない」という原曲至上主義(崇拝)(と言いつつ移調することには憚らないご都合主義)は、ギターという世界を偏屈にしナルシズムの世界に自らを閉じ込めるだけであってそこからは何も創造されないし進まない。
 
 通奏低音と装飾…すなわち即興があってのバロック音楽であり、楽譜に書かれたものが全てではない
のであり、現代人にとってバロック音楽(の演奏)は今を生きている、つまり現在進行形なのだ。

 「人それぞれ」のアプローチ(今回のような復元)や演奏(種々の楽器の編成の試みも含めて)があるから興味がつきないと思う藤兵衛である。

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