« リュート協奏曲~その4 ブリームの功罪 | トップページ | 人それぞれ »

バッハのリュートソナタ

発掘途中で忘却の彼方にあった興味深いLPをいくつか再発見。

その一   
   ブリーム/バッハ= ヴィヴァルディ・リュート・ソナタ集
Breamsonatalute_2

同じくブリームのリュートもの。ジョージ・マルコムとのハープシコードとの共演。
録音や販売の年の記載は解説にはないが、ブリームのお姿から察すべし…
写真からはっきりと金属フレット、サドル付きというリュートもどきの構造がみてとれる。(先の記事の楽器は別ものだが本質は同じであろう…)、ハープシコードもおそらく歴史的なものとは一線を画するものかもしれない。ぺダルで色々操作できる当時最先端?!の楽器を演奏するマルコムの姿をテレビで見た記憶がある。

曲目
   J.S. バッハ(ブリーム編)
       トリオ・ソナタ 第1番 変ホ長調   同  第5番 ハ長調
   ヴィバルディ(マルコム編)
      リュート・ソナタ ト短調

  バッハの原曲はオルガンためのトリオソナタ BWV525~530からの2曲
歴史的にはリュートとチェンバロのトリオソナタのような編成は存在しないと眉をひそめられるかたもおられるであろうが、(楽器の問題はひとまずおいといて)個人的には拍手喝采

 何しろオルガンのためのトリオソナタ自体が斬新で奇抜な存在。この曲をヴァイオリン、オーボエ、フルート、リコーダーなど種々の編成で再構成したCDや楽譜が巷には色々と出回っている。(私も結構好きでこの種のCDを目にするたび手に入れてきた。)バッハ自身も第4番のソナタBWV528の一つの楽章をオーボエ・ダ・モーレとヴィオラ・ダ・ガンバというこれまた特殊な編成に再構成してカンタータBWV76のシンフォニアに流用している。
 トリオソナタの一つの旋律パートと通奏低音パートをチェンバロの右手左手にそれぞれ割り振り、残りの旋律パートをしてヴァイオリンやフルートの(ソロ)ソナタとする手法もバッハの得意とするところである。BWV1039の2つのフルートのためのトリオソナタは、まさしくその手法でヴィオラ・ダ・ガンバソナタBWV1027に移しかえられている:※。また、バッハ自身の編曲かどうか定かでないがその第4楽章はオルガン用のトリオソナタBWV1027aにも編曲されてもいる。

 ※両者とも消失した原曲から編曲されたという説もある

 何がいいたいかというと、色々な楽器を持った人が集まれば、その楽器でその場にある曲を自分の楽器に合わせて弾くのはごく自然の成り行きであるということだ。そのいい例が最近よく話題になるヴァイオリンソナタBWV1025である。バッハとヴァイスとの戯れから生まれた作品というのがすっかり通説となったが(ほろ酔い気分のヴァイスが調子のよいリュートソナタを弾きはじめると、これまた出来上がったバッハがヴァイオリンを手に即興で乱入という場面を想像してしまうが…)、その音楽の戯れの集いにおいてオルガンとチェンバロの達人バッハが自宅の自慢のチェンバロでヴァイスのリュートと競演しないはずはない。バッハが自分のトリオソナタを紹介がてらヴァイスと演奏した可能性は高い。アンサンブルにたけているヴァイスはタブラチュアに書き換える必要はないからお手軽に競演に興じられるわけだ。その場合リュート用のパート譜をつくる必要もないので演奏の証拠は当然残らない。 逆にバッハ側で先のヴァイオリンとリュートのセッションを「面白かったぞ~」と記録にとどめようとしたなら大変だ。翌日二日酔いに苦しむ両巨匠の「勝手にしろ~」との了承のもと、ヴァイスから借り受けたタブラチュアを、リュートに心得のある弟子がチェンバロ譜に置き換え、競演に居合わせたバッハの弟子やら息子が(総手で?)記憶をたよりに酔っぱらいのヴァイオリンをけなげに音符に起こしたといったところが真相であろう。その証がBWV1025ということだ。  

 というわけで(内輪で楽しむ分には)無理に常識や形式にあてはめようとすると何の発展や発見もないしつまらないだけと改めておもいしらされた。常識と思われる知識もえてして思い込み、勘違い、思い上がりであるということがままあるからだ。まずは何より先達に敬意を払い、知識は柔軟に幅広く吸収せねば…と自戒する藤兵衛である。

|

« リュート協奏曲~その4 ブリームの功罪 | トップページ | 人それぞれ »

リュート」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: バッハのリュートソナタ:

« リュート協奏曲~その4 ブリームの功罪 | トップページ | 人それぞれ »